■税務署や裁判所の実質基準に関する判断は今後さらに厳格化する
実質的に退職しているかどうかについては、
前回のブログで紹介したように、
法人税基本通達に基づく具体的な判断基準があります。
しかし、最近の裁判例の動向を考慮すると、
状況は厳しくなっていると言わざるを得ません。
通達の規定に従った会社の主張が、
認められなかった事例もあるのです。
たとえば、代表取締役から取締役に役職が変わり、
役員給与の額が大幅に減少したことを理由に
支給した役員退職金について、
損金算入が否認されたケースがあります。
この決定に対して、
「損金算入が否認されるのは不当だ」と裁判で争われましたが、
その請求が棄却されました。
裁判所の主張は、次の通りです。
・通達は、そのなかに示されている3つの事実のうち、
どれかひとつでも該当すれば退職であると認めるべき、
という趣旨ではない
・本件では、実質的に退職したという事実がない
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実質基準に関する税務署や裁判所の判断は、
今後さらに厳しくなっていくことが予想されます。
そのため、とくに取引先との関係や、
財務、人事権の引継ぎなどを後継者へしっかりと行い、
重要な意思決定には関与しないようにしましょう。
思い切って、給与を受け取らない形にするほうがいいのかもしれません。
オーナー企業の場合、
退職後も引き続き経営上主要な地位を占めていることが多いため、
退職が認められない可能性は高いのです。
社長を退任したあと、経営にまったく関与できない状態は、
物足りなさを感じるかもしれませんね。
匙加減は難しいところですが、
引継ぎがうまくいかなかったことなどの
相談を受ける程度であれば、
大きな問題にはならないでしょう。
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