■常に役員退職金には損金算入可否の問題がついてくる
役員退職金では、問題になる場合があります。
それは、高額なお金を支払ったにもかかわらず、
税務署から否認されてしまうケースです。
たとえば、退職後も何らかの形で経営に携わっている場合、
税務署は実質的な退職ではないと判断し、
役員退職金の全額を損金に算入できなくなる可能性があります。
そのため、役員退職金を支給する際にもっとも気をつけなければならないのが、
社長が退職したあと、どのように会社と関わっているかです。
また、会社から支払われた退職金額が高額すぎるということで、
「過大役員退職金」とみなされ、
損金として認められないケースもあります。
その結果、多額の退職金を支払ったにもかかわらず、
全額または一部が損金とみなされず利益が減少しないため、
手元の資産だけが減少し、追加の税金を支払わなければなりません。
このように、社長の退職金に関して注意すべき点はさまざまです。
とくに役員退職金が過大なのかどうかは、
税務署がくだす判断はケースバイケースで、
常につきまとう問題だということを忘れないようにしましょう。

■法人税と所得税の相違とは
では、もし仮に
役員退職金が過大であると判断された場合は、
どうなるのでしょうか。
たとえば、会社が勇退する社長に
1億円の退職金を支払ったとします。
この1億円が適正な金額と税務署に認められれば、
会社は全額を損金として算入することができます。
ところが、税務署が
「6000万円までは許可するが、4000万円分は過大なので認められない」
と判断した場合、実効税率が30%と仮定すると、
4000万円に対して1200万円の税金が課せられてしまいます。
一方で、社長本人は退職の事実があれば、
過大な部分があっても1億円全額が退職金として承認され、
退職所得控除が適用されるのです。
会社が支払った退職金が過大と指摘され、
損金に算入できない部分があったとしても、
受け取った本人の退職所得控除には一切影響がありません。
これは、法人税と所得税との違いによるものです。
とは言え、会社の会計に影響を及ぼしながら退職金を受け取ることは、
本人にとっても心苦しいことでしょう。
退職金は貴重なものですから、
法人税も所得税に関してもスムーズに受け取りたいですよね。
税務署が損金と認定する基準については、またあらためて詳しく解説します。
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